2010年12月5日日曜日

内藤裕の釉象嵌陽葉文合子

内藤裕の釉象嵌陽葉文合子


このブログの最終回の器は、実父、内藤 裕の釉象嵌陽葉文合子(ゆうぞうがんようようもんごうす)です。

釉象嵌とは、文字通り、釉薬を象嵌することです。
素地となる釉薬と象嵌した釉薬の融点を合わせているので、その境界線は溶け合うため微妙に滲み、柔らかい線を出します。
父がずっと追いかけてきた技法です。

さて、この合子に何をいれましょうか?
昔、美術商さんと合子に何をいれるか話したことがあります。
私が、冷奴とか?と言ったら、そんなこと言うのはお嬢さんだけですよ!
と言い返されました。
多分、合子なんて売りにくいものじゃなくて、花生とか、壺とか作れって意味だったのではないかと思ってます(笑)。
そういえば、実家にはお嫁に行けない合子がごろごろ。


陽葉文の合子には、やっぱり何かワクワクするようなものを入れたいと思いますが、具体的には思い当たりません。
私の手元にあるこの合子には、これを作っていた父の姿、仕事場の釉薬の匂い、窯焚きの時の熱さまでもが、目には見えませんが詰まっていて、多分、何も入れなくても満足なのです。

工芸品を使いましょう!と言い続けてきたこのブログの最終回が、“使わなくても満足”では何か変ですが、工芸品の魅力は、“その人を幸せにする”ことです。使って幸せ、見ているだけでも幸せがあってよいのだと思います。


釉美屋 石川恭子



2010年11月29日月曜日

小暮紀一のガラスの猪口

小暮紀一のガラスの猪口

随分以前からぐいのみのコレクションをしています。

小暮さんの猪口との出合いは全くの偶然でした。
横浜のデパートで開催されていたクラフト展に出向いたときに見つけたものです。

明るい色使いの作品が多い中で、ほとんど白一色のこの猪口に魅了され、その場から動けなくなってしまったことを覚えています。
レースガラスの繊細さと高台の部分に埋め込まれたミルフィオリが実にチャーミングな作品です。

冷酒を入れてみると、驚いたことに乾いているときはマットな感じにみえる内側に、さーっと透明感が出てきます。
どういう加減なのかはわかりませんが、もう何年も使っているのに、その瞬間はいつも見とれてしまいます。


ぐいのみの後ろは、『えくぼ』というタイトルのついた南部鉄器の酒燗です。
酒燗とありますが、私はもっぱら冷酒に使っています。
鉄製なので、あらかじめ冷蔵庫に入れて冷やすことも出来、便利です。
第16回全国伝統的工芸品展で通商産業省生活産業局長賞をいただいたものです。
我が家に来て18年、愛用の一品です。


釉美屋 石川恭子

2010年11月13日土曜日

瑾齋の漆椀

瑾齋の漆椀

最近、Mバーガーで軽食を食べることがあります。

ここの季節限定メニューに玄米餅のおしるこというものがあり、ちょっと気に入っているのですが、このおしるこ、白いスープカップで出てくるのです。

お若い方には何ともないのでしょうが、お若くない私には何とも陳腐!

やっぱりおしるこは漆のお椀でいただきたいじゃないですか。

そこで、今回はお湯でとかしてできる鶴屋吉信の風流しるこを山中漆器(石川県加賀市)の瑾齋さんのお椀に入れてみました。

山中は北陸の温泉地で約400年と続く漆器産地です。

器はお手頃、中身はお手軽!

でも、スープカップでいただくよりはずっといいなぁ。

釉美屋 石川恭子


2010年11月4日木曜日

赤澤正之の藁灰釉長板皿

赤澤正之の藁灰釉長板皿

今回の器は、赤澤正之さんの藁灰釉長板皿(わらばいゆうながいたざら)です。
ちょうど季節の栗蒸し羊羹をのせてみました。
釉のかかり具合が面白くて、まるで木漏れ日があたっているように見えませんか?
長さ35㎝、幅14㎝のこの板皿は、物をのせる位置によって様々な表情を見せてくれます。

赤澤さんは益子に登り窯を築窯し、制作しています。
益子本来の“やきもの”を目指し、とてもこだわりのある方です。
物静かで、優しげでいながら、なかなかに皮肉っぽいところがまた面白い方で、めったにお目にかかることはないのですが、お会いできる時はいつも楽しみです。

釉美屋 石川恭子

2010年10月11日月曜日

三原 研のせっ器の陶板

三原 研のせっ器の陶板

このブログの第12回でもご紹介した三原 研さんの陶板です。
裏は、壁に掛けられるようになっていて、普段は壁に飾っています。


せっ器のせっは、火偏に石と書きます。(変換しないのですみません)
陶器と磁器の中間で、釉薬をかけず、焼き締めです。“地肌の風合いが賞玩される”とWikipediaにもありますが、まさにその通りの作品です。

陶板ですが、まな板皿としても使える!まさに一石二鳥だわと貧乏根性丸出し?で求めたものです。

いただきものの“味噌松風”(カステラみたいな京都のお菓子です)を盛ってみました。
いつも壁にかかっているものを、卓上で見るのもまた一興。
なんだか別の作品のように感じました。

作品は、嫌がっているかも?お菓子なんかのせて~!!
お刺身じゃないから許してね。アハッ。

釉美屋 石川恭子

2010年9月27日月曜日

輪島・キリモトのぐい呑み

輪島・キリモトのぐい呑み

このぐい呑み、タイトルは“あなた”なんです。
“あなた”があって、実は“わたし”というぐい呑みもあります。
二つのぐい呑みは、曲面がぴったり合うように出来ています。
輪島・キリモトの桐本さんはプロダクトデザイナー、いかにもといった器です。

この器、直径が67㎜、高さが60㎜と、ぐい呑みとしても大ぶりで、でも、お茶を飲むには小さく、なんとなくタンスの肥しならぬ、
食器棚にさびしく飾られてました。

品川駅のエキナカで、写真のひたし豆(青大豆と高菜のお惣菜)を見つけた時にこの器を思い出しました。もしかしたらぴったりかも?
なかなかに良い出合いでした。

釉美屋 石川恭子

2010年9月12日日曜日

垣沼一舟の蒔絵銘々皿

垣沼一舟の蒔絵銘々皿

釉美屋は新しいプロジェクトに向けて準備をしています。
その打ち合わせで、垣沼さんに会いに村上(新潟県)まで行ってきました。

垣沼さんとは、15,6年の付き合いですが、いつも電話で話をするばかりで、会いに行くことは滅多にありません。前回お会いしたのは数年前。
外国からのとんでもない注文!(彫漆の万年筆)を伝えるためとクライアントから預かった万年筆を渡すためでした。

垣沼さんは大の甘党。好みのお菓子をお土産に持参したところ、お土産に?この蒔絵の銘々皿をいただいてしまいました。(びっくり!)

こういう絵柄のお皿に主菓子を合わせるのは難しいので、干菓子のつもりで、コンビニで買ったココナッツクッキーをのせてみました。が、なんだか使うのがもったいないような銘々皿・・・って私が言っちゃおしまいなんですけど(汗)

釉美屋 石川恭子