内藤裕の釉象嵌陽葉文合子
このブログの最終回の器は、実父、内藤 裕の釉象嵌陽葉文合子(ゆうぞうがんようようもんごうす)です。
釉象嵌とは、文字通り、釉薬を象嵌することです。
素地となる釉薬と象嵌した釉薬の融点を合わせているので、その境界線は溶け合うため微妙に滲み、柔らかい線を出します。
父がずっと追いかけてきた技法です。
さて、この合子に何をいれましょうか?
昔、美術商さんと合子に何をいれるか話したことがあります。
私が、冷奴とか?と言ったら、そんなこと言うのはお嬢さんだけですよ!
と言い返されました。
多分、合子なんて売りにくいものじゃなくて、花生とか、壺とか作れって意味だったのではないかと思ってます(笑)。
そういえば、実家にはお嫁に行けない合子がごろごろ。
陽葉文の合子には、やっぱり何かワクワクするようなものを入れたいと思いますが、具体的には思い当たりません。
私の手元にあるこの合子には、これを作っていた父の姿、仕事場の釉薬の匂い、窯焚きの時の熱さまでもが、目には見えませんが詰まっていて、多分、何も入れなくても満足なのです。
工芸品を使いましょう!と言い続けてきたこのブログの最終回が、“使わなくても満足”では何か変ですが、工芸品の魅力は、“その人を幸せにする”ことです。使って幸せ、見ているだけでも幸せがあってよいのだと思います。
釉美屋 石川恭子


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